今回はろ過・蒸留・分留・再結晶・昇華法・抽出・クロマトグラフィーなどの、混合物の分離方法に関するまとめと問題です。
混合物の各分離方法の手順、石油からガソリンを取り出したいとき、食塩水から食塩を得たいときなど、混合物を分離させるにはどの方法を使ったら良いのか、確認していきます。
ろ過(filtration)とは
ろ過はろ紙を使う、液体と固体の混合物の分離方法です。
ろ過の手順
・ろ過する溶液をあらかじめ放置し、固体を沈めておく
・ろ紙を四つ折りにして円錐状にする
・ろ紙を漏斗(ろうと)に入れ、蒸留水で湿らせる
・漏斗の足はビーカーの内壁につける
・溶液の上澄み液をガラス棒を伝わらせて、ろ紙の8分目ぐらいになるよう漏斗に注ぐ
・固体がろ紙に残り、液体がビーカーに入る
ろ過の例
・泥水の分離
・石灰水の分離(白濁した石灰水から、透明な石灰水を取り出す)
茶こし、コーヒードリップ、空気清浄器など身近な例でもあります。
蒸留(distillation)とは
蒸留とは沸点の温度差を用いて混合物を分離する方法です。
蒸留の手順
・柄付きフラスコの半分以下に溶液を入れる
・温度計の先はフラスコの枝元になるように設置する
・沸騰石を入れて加熱する、フラスコに直接火を当てない
・沸点の低い方が先に気体になる
・柄付きフラスコとつないだリービッヒ冷却器で気体を冷やし、液体にする
・リービッヒ冷却器では下から上へ冷却水を流す
温度計の先端部を柄付きフラスコの柄元にくるようセットするのは、分離した気体の温度を測るためです。
蒸留の例
・水とエタノールの混合物の分離(エタノールの方が沸点が低い)
・塩化ナトリウム水溶液の分離(塩化ナトリウムの方が沸点が低い)
分留(fractional distillation)とは
分留は2種類以上の液体の混合物を沸点の違いを用いて、分離する方法です。
分留の手順
石油(原油)の精製では、加熱炉で350℃に加熱されて蒸気が蒸留塔に送られ、蒸留塔で沸点の違いを用いて軽油、ガソリン、ガソリン、LPガスなどに分離されます。
・~180℃ → LPガス
・35~180℃ → ガソリン、ナフサ
・170~250℃ → 灯油
・240~320℃ → 軽油
・320℃以上 → 重油、アスファルト
分留の例
・石油(ガソリン・灯油・軽油・重油)
・液体空気(純粋な酸素や窒素を取り出す)
ゆっくり温度を上げると沸点の低い窒素や酸素を気体として集められます。(窒素の方が沸点が低いです。)
蒸留と分留の違い
蒸留と分留はいずれも沸点の違いを用いて混合物を分離する方法ですが、蒸留は沸点の違いを用いて混合物を分離させる方法で、分留は沸点の違いを用いて2種類以上の液体の混合物を分離する方法です。分留は蒸留の一種と考えられます。
再結晶(recrystallization)とは
再結晶(晶析操作)は溶解度の違いを用いて、混合物を分離する方法です。少量の不純物を含む固体の飽和水溶液を、冷却して結晶として取り出します。
再結晶の手順
・硝酸カリウムと水を試験管に入れる
・試験管を沸騰した水の入ったビーカーに入れて加熱、硝酸カリウムを溶かす
・試験管をビーカーから取り出して、かき混ぜながら冷却、結晶を取り出す
ゆっくり冷却することで、きれいな結晶が取り出しやすくなります。
再結晶の例
・硝酸カリウムと塩化ナトリウムの分離
・ミョウバン水溶液の分離
食塩(塩化ナトリウム)のように温度を上げても溶解度に変化がない物質は、再結晶での分離に向いていません。
昇華法(sublimation)とは
昇華法は昇華性のある物質を含んだ、固体どうしの混合物の分離に用いられる方法です。(昇華は物質が固体から気体、または気体から固体になる状態変化を指します。)
昇華法の手順・例
ヨウ素と砂の混合物の分離が、昇華法の代表的な例です。
・ビーカーにヨウ素と砂の混合物を入れる
・ビーカーをゆっくり加熱する
・氷水を入れた丸底フラスコをビーカーの縁に置く
・ビーカーを冷却してヨウ素を気化する
・丸底フラスコの底面に、ヨウ素の結晶が残る
実験では昇華したヨウ素を吸入しないよう注意が必要です。気体のヨウ素は紫色をしています。
昇華法の例
・ヨウ素の混合物
・ドライアイスの混合物
再結晶と昇華法の違い
再結晶も昇華法もいずれも結晶を取り出す方法ですが、再結晶は溶解度の違いを利用する分離の方法で、昇華法は溶解度の違いではなく昇華性の有無による分離の方法です。
再結晶では溶解度が温度により異なる物質の分離に適しており、昇華法は昇華性のある物質に限られています。
抽出(extraction)とは
抽出は物質の特定の溶媒への溶解度を利用して、混合物を分離する方法です。
抽出の手順
・ヨウ素溶液にヘキサンを入れる(ヨウ素溶液が下に沈む)
・容器を振るとヨウ素がヘキサンに移動する(ヘキサンが紫色になる)
・ヘキサンを蒸発させてヨウ素を取り出す
抽出の例
・ヨウ素溶液(+ヘキサンでヨウ素を取り出す)
・フェノールと塩化ナトリウムの水溶液(+ベンゼンでフェノールを取り出す)
・臭素水(+ベンゼンで臭素を取り出す)
・植物の葉から葉緑素(クロロフィル)を取り出す(エタノールで取り出す)
コーヒーやお茶も抽出を利用しています。
クロマトグラフィー(chromatography)とは
クロマトグラフィーは、物質のろ紙やガラス板などに対する吸着力の違いを利用して、混合物を分離する方法です。
ろ紙を用いたペーパークロマトグラフィー、ガラス板にシリカゲルを塗布した薄層クロマトグラフィー、ガラス管に吸着剤を詰めて試料溶液を流すカラムクロマトグラフィーなどがあります。
クロマトグラフィーの手順
ろ紙を用いたクロマトグラフィーの手順です。
・ろ紙の一部に試料溶液をつける
・ろ紙を乾燥させて展開液に浸す
・展開液が上昇しながら、混合物の成分が分離する
ろ紙に吸着しやすい物質ほどろ紙の下の方に、吸着しにくい物質ほどろ紙の上の方まで移動します。
クロマトグラフィーの例
・インクの色素の分離
ろ紙に水性ペンで点をつけて水につけると、カラフルな色の模様ができます。黒色のペンでも紫や青などカラフルな色がつきます。
【問題編】混合物の分離方法
次の問いに答えましょう。(答えは▶をクリック)
問1 ろ紙を使って液体と固体の混合物を分離する方法を何といいますか。
問2 ろ紙などを使って吸着力の違いを利用して、混合物を分離する方法を何といいますか。
問3 特定の溶媒への溶解度を利用して、混合物を分離する方法を何といいますか。
問4 混合物の溶解度の違いを用いて結晶を取り出し、混合物を分離する方法を何といいますか。
問5 昇華性のある物質を含んだ、固体どうしの混合物を分離する方法を何といいますか。
問6 沸点の温度差を用いて混合物を分離する方法を何といいますか。
問7 2種類以上の液体の混合物を、沸点の違いを用いて分離する方法を何といいますか。
問8 ろ過の手順に関する記述で、次のア~ウのどれが正しいですか。
ア 漏斗の足はビーカーから離す
イ 溶液の上澄み液をガラス棒を伝わらせて注ぐ
ウ 溶液をろ紙いっぱいになるように、漏斗に注ぐ
問9 蒸留の手順に関する記述で、次のア~ウのどれが正しいですか。
ア 柄付きフラスコの半分以下に溶液を入れる
イ 温度計の先をフラスコ内底部近くに設置する
ウ リービッヒ冷却器では上から下へ冷却水を流す
問10 次のア~クはろ過、蒸発、蒸留、分留、再結晶、昇華法、抽出、クロマトグラフィーのうちどの分離方法が最も適切ですか。
ア 水とエタノールの混合物の分離
イ 食塩水から食塩を取り出す
ウ 泥水の分離
エ 植物の葉から葉緑素を取り出す
オ 石油を重油、軽油、灯油、ガソリンなどに分離する
カ インクの色素の分離
キ 硝酸カリウムと塩化ナトリウムの分離
ク ヨウ素と砂の混合物の分離
まとめ
・ろ過:ろ紙を使って液体と固体の混合物を分離する(泥水、石灰水)
・蒸留:沸点の温度差を用いて混合物を分離する(水とエタノール、塩化ナトリウム水溶液)
・分留:2種類以上の液体の混合物を、沸点の違いを用いて分離する(石油)
・再結晶:混合物の溶解度の違いを用いて結晶を取り出し(硝酸カリウムと塩化ナトリウムの混合物、ミョウバン水溶液)
・昇華法:昇華性のある物質を含んだ、固体どうしの混合物を分離する(ヨウ素と砂の混合物)
・抽出:特定の溶媒への溶解度を利用して、混合物を分離する(ヨウ素溶液、葉からクロロフィルを取り出す、コーヒー、お茶)
・クロマトグラフィー:ろ紙などを使って吸着力の違いを利用して、混合物を分離する(インクの分離)